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DATA REPORT

【化学だけを61校×3,360問で徹底解剖】
中学入試理科「化学分野」の学校別深層分析

問題数・出題比率・難度・出題単元・解答形式――5つの角度で見る学校差。分野別ディープダイブの第2弾は化学です。前回の物理分析と同じ枠組みで、61校・3,360問の化学小問だけを取り出し掘り下げます。化学は算数的な処理を要する単元と、知識・識別を問う単元が混在する分野です。この混在ぶりが学校によってどう違うのか、データで確認していきます。

公開日 2026.09.10 読了目安 約12分 カテゴリ 中学受験データ・教育分析

分野別ディープダイブの第2弾は化学です。前回の物理分析と同じ枠組みで、61校・3,360問の化学小問だけを取り出し、問題数・出題比率・難度・出題単元・解答形式という5つの角度から掘り下げます。

化学は「濃度」「中和」「気体の発生」など、算数的な処理を要する単元と、水溶液の性質のような知識・識別を問う単元が混在する分野です。この混在ぶりが学校によってどう違うのか、データで確認していきます。

化学の絶対問題数。「量」で見た学校差

10年分の過去問に収録されている化学小問の絶対数を見ます。物理以上に、学校によって出題量の差が大きい分野です。

化学問題数トップ10
順位学校名化学問題数
1法政大学中104
2明治大学付属明治中95
3浅野中90
4市川中89
4女子学院中89
6白百合学園中83
7横浜雙葉中75
8鷗友学園女子中72
9東京農業大学第一中71
10頌栄女子学院中69
化学問題数ボトム5
学校名化学問題数
成城学園中26
武蔵中22
広尾学園小石川中18
栄光学園中14
香蘭女学校中等科4

法政大学中は10年間で104問と、化学だけで100問を超える唯一の学校です。対照的に、香蘭女学校中等科はわずか4問しかありません。栄光学園中も14問と少なく、前回の物理分析で「物理比率トップ(38.8%)」だった栄光学園中が、化学ではほぼ出題の少ない分野になっている点は対照的です。学校ごとに理科という科目の中で、どの分野に重心を置いているかが大きく異なることが、この時点からうかがえます。

化学の出題比率。理科の中でどれだけ化学に依存しているか

化学問題数を、その学校の理科小問全体に占める割合に直すと、絶対数とは違う顔が見えます。

化学比率トップ10
順位学校名化学比率内訳
1淑徳与野中31.7%59/186
2東京農業大学第一中29.7%71/239
3明治大学付属明治中29.5%95/322
4渋谷教育学園渋谷中29.4%42/143
5雙葉中29.1%68/234
6世田谷学園中28.3%67/237
7早稲田実業学校中等部28.1%38/135
8開成中27.8%59/212
9立教女学院中27.4%48/175
10頌栄女子学院中27.2%69/254
化学比率ボトム4
学校名化学比率
成城学園中14.8%
日本女子大学附属中11.4%
栄光学園中10.4%
香蘭女学校中等科2.4%

61校平均は23.0%、中央値は24.3%です。トップの淑徳与野中(31.7%)とボトムの香蘭女学校中等科(2.4%)の差は29.3ポイントで、物理以上に開きの大きい分野です。香蘭女学校中等科は化学が理科の40分の1程度しか出題されておらず、同校を志望する場合、化学は他の三分野に比べて優先度を下げても大きな影響が出にくい可能性があります(ただし出題自体がゼロではない点には注意が必要です)。

化学の難度。その学校の中で、化学は相対的に難しいか

難度プレミアムについて:物理の記事と同じ理由により、難度A〜Dは学校内の相対基準であるため、学校間の絶対難度比較はできません。ここでも「化学C+D率(その学校の化学小問のうち、上位2段階に分類された割合)」から「その学校の化学以外(物理・生物・地学)のC+D率」を差し引いた「難度プレミアム」で、校内での相対的な位置づけを確認します。
難度プレミアム トップ10(化学C+D率-他3分野C+D率)
順位学校名化学C+D率他3分野C+D率プレミアム
1本郷中76.5%58.5%+18.0pt
2立教池袋中50.0%32.8%+17.2pt
3早稲田大学高等学院中学部43.8%29.8%+14.0pt
4法政大学中51.0%38.7%+12.2pt
5駒場東邦中61.7%50.2%+11.5pt
6淑徳与野中30.5%20.5%+10.0pt
7東京農業大学第一中43.7%33.9%+9.7pt
8学習院女子中20.0%10.4%+9.6pt
9明治大学付属中野中22.7%13.2%+9.5pt
10頌栄女子学院中30.4%21.6%+8.8pt

香蘭女学校中等科は化学C+D率25.0%・プレミアム+16.4ptとなりますが、化学小問がわずか4問しかないため、統計的に不安定です(参考値として除外)。

難度プレミアム ボトム5(化学が相対的にやさしい学校)
学校名プレミアム
広尾学園小石川中-28.3pt
日本女子大学附属中-23.0pt
海城中-17.9pt
芝中-13.4pt
武蔵中-13.2pt

本郷中は、他分野のC+D率がすでに58.5%と高い水準にある学校ですが、化学はそこからさらに18.0ポイント高い76.5%です。本郷中を志望する場合、理科全体が難しい学校の中でも、化学が最も難度の高い分野として設計されていると考えられます。

一方、広尾学園小石川中や日本女子大学附属中は、化学が他分野より20ポイント以上やさしく作られている計算になります。これらの学校では、化学は理科の中で相対的に得点しやすい分野と位置づけられている可能性があります。ただし化学の絶対問題数自体が少ない学校(広尾学園小石川中18問など)もあるため、値の振れ幅がやや大きくなりやすい点は留意してください。

化学のどの単元が出るか。中単元別の内訳

化学は「水溶液」「燃焼」「気体」「中和」など複数の中単元に分かれます。61校・3,360問全体で見ると、出題の中心は次の単元です。

化学 中単元(統合)分布(全体)
順位中単元問題数比率
1水溶液の性質・識別59217.6%
2燃焼58817.5%
3気体の性質3099.2%
4中和2437.2%
5溶解度・結晶2306.8%
5物質の性質・分類2306.8%
7金属と酸・化学反応2216.6%
8気体の発生2136.3%
9状態変化1404.2%
10反応量1023.0%
11濃度1003.0%

「水溶液の性質・識別」と「燃焼」が二大単元で、合わせて化学全体の約35%を占めます。物理が「てこ」「光」に集中していたのと同様、化学もこの2単元への依存度が高い構造です。ただし学校ごとの偏りは、物理よりもさらに極端です。

単元別・突出校(その単元が校内化学の何%を占めるか、n≥15校のみ集計)
単元最も比率が高い学校校内比率
水溶液の性質・識別駒場東邦中78.7%
燃焼開智中50.0%
気体の性質成城学園中30.8%
中和明治大学付属明治中30.5%
溶解度・結晶学習院女子中22.5%
物質の性質・分類桜蔭中60.0%
金属と酸・化学反応東京都市大学付属中24.0%
気体の発生開智中27.3%
状態変化栄東中22.2%
反応量早稲田大学高等学院中学部18.8%
濃度洗足学園中15.6%

駒場東邦中は化学小問47問のうち78.7%が「水溶液の性質・識別」です。化学のほとんどが水溶液の識別・判別問題で構成されており、駒場東邦中を志望する場合、化学対策の大部分をこの単元に投下する判断が合理的です。桜蔭中も「物質の性質・分類」だけで化学の60.0%を占め、こちらも極端な単元集中型です。

一方、こうした集中型とは対照的に、化学の中で複数単元にまたがって出題する学校もあります。単元が集中している学校ほど、過去問演習の的を絞りやすく、逆に分散している学校では、化学全体をまんべんなく仕上げる必要があります。

解答形式の違い。化学は「計算」と「実験・考察」が拮抗する科目

化学がどのような形式で答えさせられているかを、理科4分野合計の構成と比較します。

出題形式化学のみ理科全体(4分野合計)
計算29.8%20.4%+9.4pt
選択27.1%30.5%-3.4pt
記述・説明13.8%15.8%-2.0pt
実験・考察11.1%8.7%+2.4pt
知識・短答7.7%8.3%-0.6pt
資料読解7.1%11.6%-4.5pt
作図・図示2.6%4.0%-1.4pt

化学も物理と同様に計算比率が理科全体より高め(+9.4pt)ですが、物理ほど極端ではありません(物理は+12.7pt)。代わりに化学で目立つのは実験・考察の高さ(+2.4pt)です。物理は実験・考察がほぼ理科全体並み(-0.1pt)だったのに対し、化学は濃度や中和、気体発生の実験設定を読み解く出題が、理科全体の平均より多く組み込まれています。逆に資料読解は理科全体より少なく(-4.5pt)、作図・図示も物理より低い水準(2.6%)です。

化学内・計算比率が高い学校トップ5
学校名化学内の計算比率
高輪中80.7%
学習院女子中70.0%
栄東中66.7%
桜蔭中64.6%
世田谷学園中61.2%

高輪中は化学小問の8割が計算に分類されます。濃度・中和・反応量といった数値処理を伴う単元への依存度が高いことがうかがえます。

化学内・実験考察比率が高い学校トップ5
学校名化学内の実験考察比率
東邦大学付属東邦中53.5%
麻布中49.3%
市川中31.5%
筑波大学附属駒場中29.8%
開智中29.5%

東邦大学付属東邦中と麻布中は、化学小問の半数近くが実験・考察形式です。麻布中は前回の物理分析でも実験・考察比率トップ(56.2%)でしたが、化学でも同様の傾向が確認でき、麻布中は理科全体を通じて「実験を読み解く力」を重視する出題方針であることが分かります。

化学内・記述比率が高い学校トップ5
学校名化学内の記述比率
広尾学園中74.0%
海城中44.1%
本郷中33.3%
武蔵中31.8%
洗足学園中29.7%

広尾学園中は化学小問の74.0%が記述・説明に分類されます。これは同校の化学出題が「選択・記述混合」のような複合形式で構成されており、記述の要素を含む問題が代表カテゴリー「記述・説明」に統合された結果です(小問1問=1代表カテゴリーという分類ルールによるもので、実際には選択と記述を組み合わせた出題が中心です)。

化学内・選択比率が高い学校トップ5
学校名化学内の選択比率
青山学院中等部84.5%
慶應義塾中等部79.1%
東京都市大学付属中64.0%
立教女学院中62.5%
国府台女子学院中62.5%

青山学院中等部と慶應義塾中等部は、化学小問の8割前後が選択形式です。知識の正確さを問う出題が中心で、記述力よりも正誤判断の精度が問われる構成です。

経年変化。化学比率が大きく動いた学校

61校のうち10年分のデータが揃う54校について、2017〜2019年と2024〜2026年の化学比率を比較しました。

化学比率の上昇が大きい学校
学校名2017-19年2024-26年変化
渋谷教育学園渋谷中22.7%51.1%+28.3pt
世田谷学園中17.3%33.8%+16.5pt
暁星中6.5%22.3%+15.8pt
成城学園中5.6%16.7%+11.1pt
女子学院中18.7%28.3%+9.6pt
化学比率の低下が大きい学校
学校名2017-19年2024-26年変化
東京農業大学第一中45.9%19.0%-26.9pt
中央大学附属中35.6%11.1%-24.4pt
洗足学園中27.0%15.4%-11.6pt
山脇学園中27.8%17.1%-10.7pt
雙葉中33.8%25.4%-8.4pt

渋谷教育学園渋谷中は、化学比率が10年前の2倍以上に伸びており、61校の中でも最大の変化幅です。同校は化学小問の絶対数自体が61校中でも少ない部類(42問)ですが、直近の出題傾向としては化学の比重が明確に高まっています。逆に東京農業大学第一中は、かつて化学比率がほぼ半分(45.9%)という突出した学校でしたが、直近では19.0%まで下がり、平均を下回る水準まで落ち着いています。物理の記事と同様、「この学校は化学が多い/少ない」という評価は年度によって変わりうるため、直近の傾向を優先して確認することをおすすめします。

まとめ。化学対策をどう組み立てるか

61校・3,360問の化学データから見えてきたのは、次の3点です。

第一に、化学は物理以上に学校間の出題量の差が大きい分野です。法政大学中(104問)と香蘭女学校中等科(4問)の差は26倍にのぼり、これは物理の最大差(女子学院中105問÷香蘭女学校中等科22問=約4.8倍)よりもはるかに大きい開きです。志望校によっては、化学の優先順位を大胆に調整する必要があります。

第二に、化学も物理と同様、単元が極端に集中する学校があります。駒場東邦中(水溶液の性質・識別に79%集中)や桜蔭中(物質の性質・分類に60%集中)のような学校では、単元を絞った対策の効果が特に大きくなります。

第三に、化学は「計算」と「実験・考察」がともに理科全体平均を上回る、やや特殊な形式構成を持つ分野です。高輪中のように計算一色の学校もあれば、東邦大学付属東邦中や麻布中のように実験・考察中心の学校もあり、同じ「化学が得意」でも中身はまったく異なります。

物理・化学と2分野を見てきたことで、「理科が得意」という括りがいかに粗いかが、より具体的に見えてきたのではないかと思います。次回以降、生物・地学についても同様の深掘りを予定しています。

データに関する注記:本記事の数値は、61校・14,473問(うち化学3,360問)の過去問データにもとづきます。難度A〜Dは学校内の相対基準であり、学校間の絶対難度比較には使用していません。本記事の「難度プレミアム」は、各校の化学C+D率から、その学校自身の他3分野C+D率を差し引いた差分であり、絶対難度ではなく、校内での相対的な難易度配置を示す指標です。収録年度は学校によって異なり、61校のうち54校が10年分、広尾学園小石川中・立教女学院中が6年分、早稲田大学高等学院中学部が7年分、早稲田実業学校中等部・本郷中・栄東中・開智中が9年分です。経年変化の分析は、10年分のデータが揃う54校のみを対象としています。出題形式(計算・選択・記述・説明など)は、複数の技能を要する複合問題であっても、小問1問につき1つの代表カテゴリーへ統合した排他的分類です。ある形式の比率が低いことは、その形式の出題が存在しないことを意味しません。香蘭女学校中等科は化学の収録小問数が4問と極端に少なく、比率・難度プレミアムの数値は参考程度にとどめてください。

分野別ディープダイブ・全5本
物理分野の分析化学分野の分析地学分野の分析生物分野の分析解答形式の分析
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