分野別ディープダイブの第3弾は地学です。物理・化学と同じ枠組みで、61校・3,370問の地学小問だけを取り出し、問題数・出題比率・難度・出題単元・解答形式という5つの角度から掘り下げます。
地学は天体・気象・地層・地震など、暗記事項と資料読解が組み合わさる分野です。物理・化学とは異なる出題形式の傾向が見えてくるかどうかも、あわせて確認していきます。
地学の絶対問題数。「量」で見た学校差
10年分の過去問に収録されている地学小問の絶対数を見ます。
| 順位 | 学校名 | 地学問題数 |
|---|---|---|
| 1 | 東邦大学付属東邦中 | 98 |
| 2 | 浅野中 | 89 |
| 3 | 法政大学中 | 87 |
| 4 | 国府台女子学院中 | 86 |
| 5 | 市川中 | 85 |
| 5 | 女子学院中 | 85 |
| 7 | 聖光学院中 | 83 |
| 8 | 明治大学付属明治中 | 82 |
| 9 | 暁星中 | 78 |
| 10 | 日本女子大学附属中 | 76 |
| 学校名 | 地学問題数 |
|---|---|
| 広尾学園小石川中 | 27 |
| 渋谷教育学園渋谷中 | 26 |
| 栄光学園中 | 21 |
| 淑徳与野中 | 19 |
| 中央大学附属中 | 16 |
東邦大学付属東邦中は10年間で98問と、地学の演習量では61校最多です。中央大学附属中はわずか16問と、東邦大学付属東邦中の6分の1程度にとどまります。国府台女子学院中(86問)も地学の絶対数で上位に入っており、両校とも地学を理科の柱の一つとして位置づけていることがうかがえます。
地学の出題比率。理科の中でどれだけ地学に依存しているか
地学問題数を、その学校の理科小問全体に占める割合に直すと、絶対数とは違う顔が見えます。
| 順位 | 学校名 | 地学比率 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 1 | 東邦大学付属東邦中 | 35.9% | 98/273 |
| 2 | 国府台女子学院中 | 30.1% | 86/286 |
| 3 | 武蔵中 | 28.3% | 36/127 |
| 4 | 暁星中 | 27.7% | 78/282 |
| 5 | 芝中 | 27.6% | 67/243 |
| 6 | 筑波大学附属駒場中 | 27.2% | 61/224 |
| 7 | 立教新座中 | 27.0% | 62/230 |
| 8 | 明治大学付属中野中 | 26.2% | 51/195 |
| 9 | 東京都市大学付属中 | 26.0% | 66/254 |
| 10 | 青山学院中等部 | 25.9% | 68/263 |
| 学校名 | 地学比率 |
|---|---|
| 桜蔭中 | 17.1% |
| 昭和学院秀英中 | 15.7% |
| 栄光学園中 | 15.7% |
| 中央大学附属中 | 10.5% |
| 淑徳与野中 | 10.2% |
61校平均は23.0%、中央値は23.9%です。トップの東邦大学付属東邦中(35.9%)とボトムの淑徳与野中(10.2%)の差は25.7ポイントで、化学(29.3pt差)にはやや及ばないものの、物理(25.6pt差)とほぼ同水準の開きです。東邦大学付属東邦中は絶対数・比率ともに地学トップであり、同校を志望する場合、地学対策への配分を他校よりも明確に厚くする価値があります。
地学の難度。その学校の中で、地学は相対的に難しいか
| 順位 | 学校名 | 地学C+D率 | 他3分野C+D率 | プレミアム |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 本郷中 | 82.2% | 57.6% | +24.6pt |
| 2 | フェリス女学院中 | 33.3% | 20.2% | +13.1pt |
| 3 | 武蔵中 | 55.6% | 44.0% | +11.6pt |
| 4 | 雙葉中 | 55.8% | 45.6% | +10.2pt |
| 5 | 開智中 | 36.6% | 26.7% | +9.9pt |
| 6 | 日本女子大学附属中 | 44.7% | 35.7% | +9.0pt |
| 7 | 広尾学園中 | 39.2% | 31.0% | +8.2pt |
| 8 | 海城中 | 48.3% | 40.3% | +7.9pt |
| 9 | 広尾学園小石川中 | 40.7% | 32.9% | +7.8pt |
| 10 | 栄東中 | 37.2% | 31.4% | +5.8pt |
| 学校名 | プレミアム |
|---|---|
| 渋谷教育学園渋谷中 | -19.2pt |
| 立教新座中 | -15.7pt |
| 早稲田大学高等学院中学部 | -15.0pt |
| 淑徳与野中 | -14.6pt |
| 慶應義塾中等部 | -14.5pt |
本郷中は、化学の難度プレミアムでも61校トップ(+18.0pt)でしたが、地学ではさらに大きい+24.6ptで、こちらも1位です。本郷中は化学・地学の両方において、「その学校の理科の中で最も難しく作られた分野」という位置づけがデータ上明確です。理科全体としては、本郷中の対策は物理・生物よりも化学・地学に重心を置く方が、難度の見合った対策になると考えられます。
一方、地学は前回・前々回に比べて、難度プレミアムがマイナスの学校が多い分野です。慶應義塾中等部や早稲田大学高等学院中学部、立教新座中などは、地学が他分野より10ポイント以上やさしく作られています。これらの学校では、地学は理科の中で相対的に得点源にしやすい分野と位置づけられている可能性があります。
地学のどの単元が出るか。中単元別の内訳
地学は「天体」「気象」「地層」「地震」など複数の中単元に分かれます。61校・3,370問全体で見ると、出題の中心は次の単元です。
| 順位 | 中単元 | 問題数 | 比率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 天体総合 | 477 | 14.2% |
| 2 | 月・満ち欠け | 418 | 12.4% |
| 3 | 気象観測・天気 | 382 | 11.3% |
| 4 | 星・星座 | 260 | 7.7% |
| 5 | 気圧・風・前線・天気図 | 253 | 7.5% |
| 6 | 火山 | 236 | 7.0% |
| 7 | 地層・堆積 | 204 | 6.1% |
| 8 | 地震 | 189 | 5.6% |
| 9 | 湿度・雲・降水 | 177 | 5.3% |
| 10 | 太陽の動き・季節 | 151 | 4.5% |
| 11 | 流水・地形 | 137 | 4.1% |
| 12 | 地球・地理 | 96 | 2.8% |
「天体総合」「月・満ち欠け」「星・星座」を合わせた広義の天体分野だけで、地学全体の34.3%を占めます。天体は地学の中でも突出した比重を持つ単元群です。
| 単元 | 最も比率が高い学校 | 校内比率 |
|---|---|---|
| 天体総合 | 市川中 | 74.1% |
| 月・満ち欠け | 広尾学園小石川中 | 37.0% |
| 気象観測・天気 | 渋谷教育学園幕張中 | 35.7% |
| 星・星座 | 東京都市大学付属中 | 28.8% |
| 気圧・風・前線・天気図 | 中央大学附属中 | 37.5% |
| 火山 | 城北中 | 27.9% |
| 地層・堆積 | 栄光学園中 | 57.1% |
| 地震 | 東洋英和女学院中学部 | 31.0% |
| 湿度・雲・降水 | 白百合学園中 | 24.0% |
| 太陽の動き・季節 | 立教新座中 | 21.0% |
| 流水・地形 | 世田谷学園中 | 22.0% |
| 地球・地理 | 法政大学中 | 25.3% |
市川中は地学小問85問のうち74.1%が「天体総合」で、他は気象観測・天気(21問)と地層・堆積(1問)にとどまります。市川中は物理でも「運動・力学」に54.3%集中する単元集中型でしたが、地学でも同様の傾向が確認でき、市川中全体として「分野内での単元集中度が高い学校」という特徴が浮かび上がります。栄光学園中の「地層・堆積」57.1%は、地学の絶対数自体が21問と少ないため参考値として扱うべきですが、方向性としては単元が集中していると言えます。
解答形式の違い。地学は「資料読解」中心の科目
地学がどのような形式で答えさせられているかを、理科4分野合計の構成と比較します。
| 出題形式 | 地学のみ | 理科全体(4分野合計) | 差 |
|---|---|---|---|
| 選択 | 32.8% | 30.5% | +2.3pt |
| 資料読解 | 18.1% | 11.6% | +6.5pt |
| 記述・説明 | 16.6% | 15.8% | +0.8pt |
| 計算 | 13.7% | 20.4% | -6.7pt |
| 知識・短答 | 8.8% | 8.3% | +0.5pt |
| 実験・考察 | 5.0% | 8.7% | -3.7pt |
| 作図・図示 | 4.3% | 4.0% | +0.3pt |
物理・化学がいずれも計算比率で理科全体を上回っていたのに対し、地学は唯一、計算比率が理科全体より低い分野です(-6.7pt)。代わりに際立つのが資料読解の高さ(+6.5pt)で、これは物理(-1.8pt)・化学(-4.5pt)とは正反対の傾向です。天気図の読み取り、月齢や星座の観測データ、地層の柱状図など、資料をもとに判断させる出題が地学には集中しています。実験・考察は理科全体よりやや少なく(-3.7pt)、選択・記述・知識はいずれもほぼ理科全体並みです。
| 学校名 | 地学内の資料読解比率 |
|---|---|
| 東邦大学付属東邦中 | 67.3% |
| 明治大学付属明治中 | 65.9% |
| 法政大学中 | 49.4% |
| 東京農業大学第一中 | 46.3% |
| 浦和明の星女子中 | 42.0% |
東邦大学付属東邦中は、地学の絶対数(98問)でも61校最多でしたが、その3分の2が資料読解形式です。同校の地学は「資料を読み取らせる出題を大量に演習する」という一点に集約して対策できる、非常に明確な構造を持っています。
| 学校名 | 地学内の計算比率 |
|---|---|
| 栄東中 | 58.1% |
| 横浜雙葉中 | 33.3% |
| 栄光学園中 | 33.3% |
| 早稲田中 | 30.0% |
| 開智中 | 29.3% |
栄東中は、物理・化学でも計算比率が上位(物理85.7%・化学66.7%)でしたが、地学でも58.1%と最多です。栄東中は理科全体を通じて計算処理力への依存度が特に高い学校であることが、3分野を通じて一貫して確認できます。
| 学校名 | 地学内の記述比率 |
|---|---|
| 広尾学園中 | 76.5% |
| 海城中 | 50.0% |
| 学習院女子中 | 48.0% |
| 高輪中 | 44.4% |
| 世田谷学園中 | 38.0% |
広尾学園中は化学でも記述比率トップ(74.0%)でしたが、地学ではさらに高い76.5%です。これも同校の出題が「選択・記述混合」のような複合形式で構成されており、記述の要素を含む問題が代表カテゴリー「記述・説明」に統合された結果です。広尾学園中を志望する場合、理科全体を通じて、選択と記述を組み合わせた解答形式に慣れておく必要があります。
| 学校名 | 地学内の選択比率 |
|---|---|
| 慶應義塾中等部 | 89.6% |
| 青山学院中等部 | 77.9% |
| 慶應義塾湘南藤沢中等部 | 67.3% |
| 東京都市大学付属中 | 63.6% |
| 中央大学附属中 | 62.5% |
慶應義塾中等部は地学小問の約9割が選択形式です。同校は難度プレミアムでも地学が最も易しい部類(-14.5pt)に入っており、「選択形式・知識中心・相対的にやさしい」という一貫した傾向が見えます。
経年変化。地学比率が大きく動いた学校
61校のうち10年分のデータが揃う54校について、2017〜2019年と2024〜2026年の地学比率を比較しました。
| 学校名 | 2017-19年 | 2024-26年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 昭和学院秀英中 | 0.0% | 23.6% | +23.6pt |
| 浦和明の星女子中 | 15.8% | 34.4% | +18.6pt |
| 淑徳与野中 | 7.0% | 18.5% | +11.5pt |
| 中央大学附属中 | 0.0% | 11.1% | +11.1pt |
| 明治大学付属中野中 | 22.8% | 31.0% | +8.2pt |
| 学校名 | 2017-19年 | 2024-26年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 世田谷学園中 | 30.7% | 7.4% | -23.3pt |
| 栄光学園中 | 21.4% | 0.0% | -21.4pt |
| 渋谷教育学園渋谷中 | 20.5% | 4.3% | -16.2pt |
| 筑波大学附属駒場中 | 32.8% | 20.8% | -12.0pt |
| 法政大学中 | 28.2% | 18.0% | -10.2pt |
昭和学院秀英中は、2017〜2019年は地学の出題が一切なく、直近3年で23.6%まで急増しています。栄光学園中は逆に、直近3年間(2024〜2026年)は地学の出題がゼロでした。同校は年度によって「その年ほぼ1分野に集中して出題する」傾向があり(2024年は生物中心、2025〜2026年は物理・化学中心)、単年の過去問だけを見ると分野の偏りを見誤りやすい学校です。栄光学園中を志望する場合は、直近1〜2年分だけでなく、より長い期間の過去問で分野バランスを確認することを強くおすすめします。
まとめ。地学対策をどう組み立てるか
61校・3,370問の地学データから見えてきたのは、次の3点です。
第一に、地学は物理・化学と異なり、資料読解を中心とした分野だということです。理科全体平均より計算が6.7ポイント少なく、資料読解が6.5ポイント多いという構成は、物理・化学とは逆方向の特徴です。「地学は暗記科目」という理解だけでは、資料読解の比重の高さを見落とします。
第二に、天体分野(天体総合・月の満ち欠け・星座)が地学全体の3割超を占め、市川中(74.1%)のように単元が極端に集中する学校もあります。単元集中型の学校では、天体分野への重点対策が特に効果を発揮します。
第三に、栄光学園中のように、年度によって出題分野が大きく偏る学校が存在します。直近1年だけの過去問傾向を鵜呑みにせず、複数年をまたいだ確認が欠かせません。
物理・化学・地学と3分野を見てきたことで、理科という科目が、分野ごとにまったく違う技能を要求していることがより具体的に見えてきました。次回は生物分野の深掘りを予定しています。